【マニュアル人間 VS 熟練治療家】

2014年12月14日

おはようございます。YMC株式会社の山本です。

僕なんかは、

「お店のマニュアル(教科書)を作りましょう」

というお話をしますが、

「いやいや、マニュアルに頼っているようじゃダメですよ」

と否定的に思われている先生も多いです。

マニュアルがなくても、

●患者さんのために最適に動けるのが普通
●俺は今まで先輩を「見て盗んできた」から、お前もそうしろ

という感じでしょうか?

料理で例えれば・・・

ある程度料理ができるようになると「レシピ通り」やらなくても、それなりの料理が作れるようになる。

すると、途端にレシピをバカにし始めるのです。

「レシピ通りにやらないと料理が作れないようじゃダメよね!フン!」

でも、僕はそうは思いません。

“商店街の頑固おやじ”レベルの個人事業で生涯を終えたいのであれば、マニュアルなんぞなくても十分にやっていけるかもしれません。

このまま生涯現役で、寝る間を惜しんで頑張って働いたら、年商1000万円~3000万円くらいは楽勝でしょう。

今、50代~60代で貯蓄があれば、このまま逃げ切れます。おめでとうございます。

ただ、事業を今よりも発展したくて、「会社組織として年商で億を超えたい」と思っている、

もしくは、20代~40代の治療院経営者で、今後30年生き残っていくビジネスにしたいのであれば、絶対にマニュアルは必要です。

なぜならば、人は失敗をする生き物であり、“勘”のみに頼るのは、実際は効率が悪いからです。

【マニュアル人間 VS 熟練職人】

日本一の純米大吟醸の「獺祭(だっさい)」なんてその典型例です。

「獺祭」は、今や幻の酒と言われている有名な酒なので、飲んだことがある方も居ますよね?

この30年間に売上を40倍にしたわけですが、徹底したマニュアルで、品質を管理しています。

通常、日本酒を作る醸造所には「杜氏(とうじ)」と呼ばれる、日本酒の醸造工程を担う職人集団がいます。

しかし、メチャクチャ売上を伸ばしている「獺祭」を作る醸造所には、その職人集団の「杜氏」が居ないのです。

普通、日本酒の醸造所と言うと、歴史ある木造の建屋に、古めかしい木樽があって・・・というイメージですが、「獺祭」を作る醸造所は、近代的なビルでまさしく工場です。

製造工程は機械管理されており、いたるところにセンサーがあり、醸造途中の酒の温度なんかもグラフ化されている。

昔ながらの杜氏による職人技ではなくて、徹底したマニュアル管理で作られている日本酒なわけです。

もともと、「獺祭」を作る旭酒造の社長は、酒造りにいちいち口を挟むので、「杜氏」から煙たがられていました。伝統的に、日本酒づくりというものは、「杜氏」が一番偉かったわけです。

「杜氏である俺たちが作る酒に、いちいち口を出すな!」

という感じで、職人たちもプライドがあるわけです。

そんなときに、旭酒造の経営危機が重なり、ある時期に「杜氏」たちが一気に辞めちゃったんですね。

しかし、旭酒造の社長は諦めませんでした。社員たちと相談して、自分たちで日本酒を作ってみることにしたのです。

「日本酒つくりってやつは本来はシンプルなものなんだ。教科書に書かれている通りに純米大吟醸を作ってみよう」

すると、どうでしょう。

面白いことに、明らかに味が良くなったのです。

職人の経験や勘より、基本に忠実なほうが、美味しい酒ができたのです。

私たちは、教科書に書かれている通りに純米大吟醸を造ってみました。そうすると、おもしろいことに明らかに味がよくなった。特に製造量の多い手頃な品種で違いがでました。(プレジデント2014.12.29『日本一の純米大吟醸「獺祭」の逆転発想』より引用)

このときから、徹底した数値管理に基づく酒造りが始まり、今の「獺祭」に至っているわけです。

人間の“勘”ほど、当てにならないものはない

人は喜怒哀楽があり、とても感覚的な生き物です。

しかし、そういった感覚や勘というものは、たびたびヒューマンエラーを引き起こすわけです。

“指差喚呼”と呼ばれるヒューマンエラー防止策があります。

良く、電車の車掌さんが「停車位置よし!」などと、指をさしながらやっているアレです。

●目で見て
●腕を伸ばし指で指して
●口を開き声に出して「○○○、ヨシ!」
●耳で自分の声を聞く

これくらいやらないと、人間って間違いを起こすぐらい「不正確」な生き物なんです。

経験や勘だけに頼っていると必ずエラーが起きるってことですよね。

「マニュアルに頼っているようじゃダメですよ」

という人は、マニュアル対応をすることで、イレギュラーが起こった場合、お客さんに迷惑をかけてしまうことを懸念していると思います。

しかし、本当に良いマニュアルは、そのイレギュラーが起こったときのガイドラインまで書かれています。

マニュアルの完成度が高ければ「マニュアルに頼っているようじゃダメですよ」とはならないはずなんです。

もちろん、そこまでの完成度のマニュアルつくりは大変ですけどね。

ようは、良い品質のサービスを、より多くの人に提供するためには、そのエラーが起きないように「マニュアル」を用意して、そのとおりに実行することが重要ってことなんです。

しかも、良いマニュアルが完成したら、あとは新人でもそのとおりにやるだけで同じ品質のものが提供できるようになるわけですね。

感覚的にやっていたり、その場の感情でアレンジをしてみたりやっている方は、見直してみたほうが良いかもしれませんよ。

山本