治療院では「施術」を売るな!ネッツトヨタ南国に学ぶ経営術
おはようございます。
YMC株式会社の山本です。
顧客満足度がダントツに高くて有名なカーディーラーが、僕の地元にあります。
その名も、
●ネッツトヨタ南国
です。
3店舗で売上規模は年商50億ほどで、従業員約130人の会社です。
全国のトヨタ販売会社(約3OO社)の中で、調査開始以来、顧客満足度トップの座を一度も譲ったことがないそうです(2011年調べ)
こんなエピソードがあります。
リーマンショックが起こった、2009年。
ネッツトヨタ南国の経営を心配したお客さんが一斉に購入に動き、“過去最高の年間1455台を販売した”という伝説もあります。
それくらい、熱烈なファンを作っているディーラーだそうで全国の経営者が見学に来るくらい有名らしいです。
高知県という、県民の所得レベルも全国ビリケツに近い過疎地の、小さなディーラーが日本一って…。
どこに、そんな秘密があるんでしょうか?。
先日、実家に帰ってたんですが、僕の地元は高知県南国市で、ネッツトヨタ南国は、めっちゃ近いわけです。
「まあ、勉強がてらフラッと寄ってみるか」
ということで、ネッツトヨタ南国に冷やかしにいって来ましたのでシェアします。
なぜ、このディーラーは、多くのファンを抱えているのか?
僕なりに感じたことを分析したいと思います。
秘密1,ネッツトヨタ南国は、他のディーラーが休みのときも営業してた
まず、何が凄かったかというと、
●ライバルが休んでいるお盆に営業していた
ってことです。
向かっている途中、いくつかの自動車ディーラーの前を通るんですが、軒並み休んでいるんですよね。
でも、行くと、営業していた。
メッチャわかりやすいアドバンテージです。
ライバルがやっていないことを、やっているわけです。
あとで調べてみると、 雑誌にこんなことを書いていました。
定休日はなく、他店よりも朝早くから夜遅くまで営業する。
顧客の購入検討時に試乗できる時間は丸二日。
試乗車の数も三〇車も用意するなどサービスは他を圧倒する。
引用元:プレジデント2011.5.2
なるほど、他店よりも営業時間が長くて、死ぬほど働いているわけですね。
さらに、サービスの品質も良いとなりゃ、人気出ますよね。
当たり前だのクラッカーですよ。
そんなの。
あと、ネッツトヨタ南国は、敢えて自動ドアを採用してないそうです。
社員の思考停止を防ぐため、ネッツトヨタ南国にはとにかくルールがない。
接客マニュアルは皆無。
「感動は人のちょっとした頑張りや工夫で提供できる簡単なものなのに、便利すぎる環境はその力を社員から奪う」
という横田相談役の考えから、意図的に不便さを残している。
例えば玄関は自動ドアにせず、お客が来店したら社員が飛び出してドアを開ける。
駐車場には白線がない。
お客が戸惑わないように社員が丁寧に誘導する。
引用元:日経トップリーダー 2015.2
まあ、僕が行ったときは、スタッフがドアを開けてくれなかったんですけど(笑)
敢えて自動ドアにしてないのには、理由があるってことですね。
決して、ケチっているわけではないそうです。
お店に入った、僕は、店員の可愛いオネェさんに、用件を聞かれました。
「どういったご用件でしょうか?お知り合いの担当者はおられますか?」
的なことを聞かれたんですが、完全に飛び込みだったので、
「いえ知り合いの担当者はいません。ちょっと車を買おうと思ってて…。目当ての車種とかも決まってません。」
と言っておきました。
「こちらの席でお待ちください」
僕は席で待つことになりました。
秘密2,ネッツトヨタ南国は「人」をウリにしている
席に通されると、まずあったのが、
●スタッフ紹介の冊子
でした。
車のカタログは、席においてなかったです。
かなり、作りこまれたスタッフ紹介の冊子で、そのスタッフの趣味などのパーソナリティがわかるような内容ですね。
あとで調べてみたんですが、ネッツトヨタ南国は、とにかく「人」をウリにしている。
スタッフの自主性を引き出して、マニュアルではできない接客をウリにしているようですね。
中でもユニークだったのが、人材採用に面白い取り組みをしていたことです。
大卒採用の場合、学生との最初の接点は大学などで開催される合同会社説明会。
ここで会社の概要や求める人材像を伝える。
普通なら次の段階はエントリーシートの提出、面接試験へと移るが、
ネッツトヨタ南国の場合は、会社訪問を学生に提案する。
学生が会社に訪ねてくると2、3人の社員がそれぞれ30分ほど話をする。
採用担当者は同席せず、学生が仕事内容や待遇面を率直に聞くための場に徹する。
こうした会社訪問を2、3回繰り返す。
じれったいような気もするが、この会社訪問のプロセスこそが重要だと横田相談役は考える。
「給与は高いといえず、店舗主催イベントも多くて拘束時間は長い。
接客マニュアルもないので、自分で考えることができないと仕事にならない。
こうした組織風土に合わない学生は、会社訪問中に自然に辞退していく。」
複数回の会社訪問後も就職を希望する学生に対してだけ、ようやく採用試験を受けることを提案する。
インターンシップの期聞を含めると、採用が決まるまでに最大200時間、学生は会社側と接するという。
「選んでもらうのを待つというプロセスには、経営者の強い意志が必要になる」
と横田相談役は強調する。
引用元:日経トップリーダー 2015.2
ようするに、自社風土に合わないスタッフが入ってこないように工夫をしているわけです。
さまざまなハードルを設けておいて、飛び越えてくるやつだけを採用するってことですね。
ネッツトヨタ南国では、
人の役に立つことや、自分の成長そのものが『喜び』なのだと気づいてくれた人を採用するそうです。
こんな、給料が安くても自主性を持ってめっちゃ働いてくれる都合の良いスタッフ欲しいですよね(笑)
そんな都合の良いスタッフは、なかなか見つからないので、200時間ほどかけて、“変わった人材”をセレクションしているわけです。
自社でゼロから育てることに時間をかけるってよりも、そういう利他的な動きができる優秀なスタッフを選ぶことに時間をかけている。
僕ら中小企業経営者は、スタッフを採用するときに、
「猫の手も借りたいから、すぐに働けるやつを、しかたがなく採用」
します。
人材のセレクションに時間をかけないわけです。
これが、そもそもの、間違いですね。
そういう間に合わせで採用したら、自分の治療院に合うスタッフなんて来るわけないですよ。
人材採用は、欲しい人を明確にして、時間をかけて選ぶ必要があるってことです。
秘密3,ネッツトヨタ南国は、売り込まないのに売れる
席で待っていた僕の前に、 色黒で短髪のガタイの良い担当者が来ました。
「こんにちは。今日はどういった目的で?」
と聞かれたので、
「県外に住んでいるんですが、実家に帰ることになって、車が必要になったので…」
という設定にして、さぐりさぐり、話しを聞いてみました。
全国でも凄く成績がいいディーラーということで、どんなに強烈な売り込みが待っているか、と構えていたんですが、真逆でした。
●まったく売り込まれない
拍子抜けするほど、売り込まれないわけです。
「どういった目的で、車を検討されますか?」
「今、乗ってらっしゃる車はなんですか?」
くらいしか質問されませんでした。
あとは、僕がした質問に答えるだけ。
担当者があまりにも喋らないので、僕があれこれと喋ってしまっていました(笑)
●喋らないことで、逆に話を引き出す
このへんも、秘密があるのかもしれません。
アンケートと称して、こちらの個人情報が取られることもありませんでした。
電話などで、フォロー・アップする気がないんですよね(笑)
どうやら、ネッツトヨタ南国は、売り込まないことがウリなのだとか。
ネッツトヨタ南国は、こんなことを言っていました。
お客様は口では
『(価格を)とにかく安くしてほしい』
と言いますが、実際に値段だけで決めている人は、経験上ほとんどいません。
一般の販売店であれば営業マンを、当社のお客様であれば『ネッツ南国』を信頼して購入するのです。
(中略)
さらに販売の現場では、顧客の家族構成や給与水準を考え、グレードの低いクルマの購入を提案していることもよくあるという。
引用元:プレジデント2011.5.2
こんな感じで、お客さんから信頼を得られれば、
「売り込まなくても売れるようになる」
ってことですね。
売り込むのではなくて、お客さんとの接点を重視していました。
数々のイベントを企画して、とにかく接触をする。
新車発表会などのイベントを見学された方からは、
「スタッフがいきいきと働いていて素晴らしいですね。ところで、このイベントで車は何台売れるのですか」
とよく質問されます。
私が「さあ、知りません。売るためのイベントではありませんし、私はイベントの内容には口を出しませんから」
と答えると、半ばあきれた顔をされます。
引用元:日経トップリーダー 2015.2
とにかく、短期目線ではなくて、長期目線ですね。
ちなみに、ネッツトヨタ南国では、値引きもあまりしないそうです。
お客は他店で買える同じ車種の車をネッツトヨタ南国で高く買っているのです。
こういう現象が起こるのも、短期目線での売上アップではなくて、長期目線で利益を目指すという、方針のたまものですね。
ただ、ネッツトヨタ南国の表面を、そのままマネしてはいけない
ネッツトヨタ南国に実際に行ってみたり、いろいろと調べてみると、下記のことが分かりました。
- とにかくスタッフは長時間働いている
- マニュアルなし。ただ、自主性を持ったスタッフを採用する仕組みがある
- 短期的な売り上げではなくて長期目線で考える
- 商品ではなくて人を売ることで、車が高く売れる
ってことですね。
ただ、これは、僕らのような超小規模店舗には、全て当てはまるわけではありません。
会社の規模や商品によって、変えなければならないのです。
特に、採用に関しては、僕らのような資金力のない会社は、真似できません。
200時間も採用に時間をかける余裕がない。
それに、初期の段階では、そこまで魅力的な会社でない可能性も高い。
すると、能力もなければ、自主性もないスタッフでも、売り上げをあげなければならない。
となれば、ある程度のチェックリストや、マニュアルは必要なのです。
売上を効率良くあげるためには、セールストークなどをマニュアルにしたほうが良いので。
ちなみに、ネッツトヨタ南国には、ガチッとしたマニュアルはありませんが、
「自己申告考課表」
というシートがあります。
行動規範表というイメージですね。
凄く細かい、社内の約束事が書かれたチェックシートがあるのです。
これがマニュアル代わりですね。
それに、超小規模の治療院なら、目先の売り上げにこだわる必要があります。
売り上げがないと、リアルに潰れますから。
ただ、長期目線でビジネスを考えることは、生き残る上では大事です。
なので・・・
ある程度の体力がつくまでは短期目線で、体力がつき始めたら徐々に長期目線に切り替えることが、運用としてはスマートかなと。
超優良企業の「ネッツトヨタ南国」を肌で感じてそういうふうに思いました。
何かのヒントになれば嬉しいです。
山本